皆さんは、においによって記憶が蘇ったことはありませんか？
土や田んぼのにおいを嗅いで、生まれ育った田舎を思い出したことや、街ですれ違った人の香水の香りから昔、好きだった人のことを思い出したこと…。
この時、ぼんやりとした記憶を思い出すのではなく、いつ、どこで、どんなことをして、どんな気持ちになったかというような非常にはっきりとした記憶であることが多いのです。
視覚的な不思議といわれるデジャウ体験もよく知られていますが、このような状況において、特ににおいは記憶と密接に繋がっていることが多いのです。
においと記憶の関係は科学的にはあまり立証できませんが、理由の一つに「五感(視覚・聴覚・味覚・触覚・そして嗅覚)の中でもっとも原始的な感覚であるから」ということが言えます。
普通、外部からの刺激(耳、口、肌など)から伝えられる信号は、まず脳の視床という器官に集められ、その後、視覚野などそれぞれの情報を把握する部分へと運ばれていきます。
視床というのは、生物の生命機能を維持する基本的な器官で、さまざまな情報を統合する役割を果たしています。
しかし、嗅覚だけはこの視床を通らず、ほぼ直接脳へと情報が伝えられます。
どうして嗅覚だけが視床を通らないのでかしょう…？
残念なことに、その答えは未だに分かってはいません。
ですが、「嗅覚は他の五感とは違う特別な感覚である」と言うことは明確なのです。